本の大学より安い。
(4)教職員原則として一つのコースに一人の教授で、常勤の職貝は事務官を含め十七人と少なく、その道の専門家のVisting Professorを主として欧米から年間約百二十人を招請している。

(5)教育
座学は九十分授業で、内容は各学科共通基礎科目および専門科目から成り立っており、大学院レベルである。私は、訪問した目的の一つである「今後の商船学は如何にあるべきか」に関連してMETのシラバスと授業風景に特に興味を持ったが、基本的に私の考えているメニューとほぼ同様の内容を知って安心した。
私も授業を聞いてみたが特に難解ではなかった。そして、学生の勉学意欲がきわめて高い光景を久しぶりに見た思いがした。またFeld Study(学外研修)があり、教授の引率のもとに学生が世界各地を訪れている。この大学での調査の後、私はドイツのハンブルクに行ったが、MET(航海コース)の教授と学生がそこに実習に来ていた。卒業すると修士号が付与されるが、成績不良な場合はデイプロマしか付与されない。
(6)学生
世界各地から優秀な学生が選ばれてきており、授業中の質問も多く、居眠りなどはまったく見られない。卒業後は各国で要職につきIM0の総会では、数十人のWMUの卒業生が各国代表として集まるという。
女子学生も一割り弱在学しており、彼女らの学科はGMAEP,MSA,SP等様々であり、卒業後の進路はShipping Economics Analyst Director of a Shipping Agency Officer with INMRSAT等多くの管理職である。

(7)学生寮
学生の殆どは、街の中心を横切って約三キロメートル(車で約十分、徒歩五十分)離れた閑静な住宅街にあるHenrik Smithと呼ばれる寮で生活している。その居住環境は素晴らしく、日本のいわゆる学生寮のイメージとはほど遠い。約二百ある部屋は広く、それぞれにTV、自炊設備、シャワーがある。もちろん自炊しない人のために食堂や洗濯室、サウナやプール、駐輪場、駐車場もある。客員教授もその寮に寝泊まりし夜遅くまで修士論文の指導が行われている。
私もこの客員教授の宿泊施設(居間、ツインの寝室、バスルームダイニングキッチン、ロッカー室)に滞在したが、すぐ近くにあるHotel Sheratonをもしのぐほど立派であった。
(8)雑感
このような状況を見ると「日本は最高の教育施設と水準、日本の船員教育は世界最高水準……」といわれているが果してそうであろうか。確かに高度な教育や研究が行われているが、システマチックにそれらがまとまっているかという疑問を感じた。つまり、日本における各種商船・船員教育機関全体をシステムと見立てて、その個々がそれぞれの分担機能を果たし、トータルとして適正な成果を得ているかという疑問であった。
またこの大学を日本が利用する方法として、例えば、日本における商船高尊の商船学科を卒業した者(準学士号取得)が入学できるようにはならないだろうかとも考えた。−つづく−
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